戦争を考える

2008年1月 6日 (日)

七月七日

古処 誠二 作    2004・9  集英社

 そして俺も、その意識をもっている一人なんだ。俺は白虎隊を立派だと思う。だから恥じてるんだ。分かるか?あんたはさっき「恥の文化」と言ったが、確かにその通りだよ。間違ってない。だけど、それ自体を勘違いしてる。恥の文化は例外とか、前例のないことを嫌う文化だよ。(略)和を重んじる文化だ。だからこそ、捕虜は許されないんだ。

 視点を変えた作品。この作品に関しては、思うところがあったので、長く書く。戦争のことだから、色々な考え方があるかも知れない。以下の「思うところ」が間違っていたとしても・・・それはご容赦だ。

 私は日本人だから、アメリカ兵が日本人を馬鹿にした発言にたとえそれが事実であろうと気分を害す。その彼らが日本を怖いとおびえれば、晴れたような気分になってしまう。

 これが血というものなのだろうか。非道を尽くしたことや、南洋諸島で命を落とした人のためにも、日本陣の戦争を肯定してはならないのに。戦争は、ゲームのようだ。水源というカードを取れば、勝ちが見えてくる。一つ一つ山を占領する。・・・まるで陣取りゲームだ。この駒が人で、人を殺しながら、行く。

 何のために戦争?こどもが戦争ごっこが好きなように、人間の心の中には争いを好む心が潜在している。争いは起伏を生む。人は人生を充実させようとする。

 私たちは戦争を起こさぬよう努力しなければならない。しかし、人間が人間である限り、人生を充実たるものにさせんとする習性が目を覚ますのではないだろうか。地球にとって、人間とは業な生き物だ。

 ・・・と、ここまで考えさせてくれるのだから、この本はすごい。

 

2007年8月23日 (木)

人間の条件

五味川 純平 作

三一書房  1973.7

  砲撃がいかに凄絶であるかということは知っていなければならなかった。これは惨烈というのではなかった。それはただ驚愕であった。このように端的な死と絶望が、そおn叫喚と乱舞が、突如として、しかも冷静な機会の反復作用によって、人間の上に吹き荒ぶということが!

 ヒューマニストの主人公、梶が朝鮮の捕虜を収容した施設でどのように生きるのかを描いた作品。正直、この作品はいろいろなことを考えさせてくれる。読んで欲しい一冊だ。

 私が戦時中に生まれていたら、梶のようであったのではないか。人を人として扱うことは、一緒であったと思う。作中、密林付近の村へ食料をもらいに行く場面がある。彼らは騙されてしまう。「いい日本人もいる」という理屈は通用しないのだ、日本人がその村へ侵攻した時点で。他者の見方はすべて日本人を憎む見方になってしまうのだ。結局信じられるものなどないのか。戦争を作り出すとは恐ろしく、あってはならないことだ。けれど人間が非道になってしまうのはなぜか。倫理という観念が欠如してしまうのはなぜか。人間の心の中にこれが眠っているのかと思うと、怖く、そして哀しい。

2007年7月29日 (日)

黒い雨

井伏鱒二 作

新潮社 昭和41年10月

 ピカドンこのかた、人の死骸を見すぎるほどに見たにもかかわらず、死骸というものが僕には怖いのだ。~僕は着ているものを脱ぎながら「白骨の御文章」を口のうちで唱えた。

 戦争がとても怖かった。小学生の夏、初めて戦争、そして原爆の存在を知ったとき、いつ爆弾が落ちてこようか心配で心配で、大泣きした。今は亡き祖母が優しくなだめてくれた。カーテン越しの空を見るのも嫌だった。一人で死ぬのが嫌だった。

 教科書教材でもあったこの小説をいま全編をとおして読んでみると、やはりこたえるものがある。阿鼻叫喚というが、この言葉が、なんと地獄絵を表しているだろうか。状況を思い浮かべようとも、臭いは分からない。しかし、この嗅覚にも目を向けねばならないだろう。近日、戦争を生きた御仁から当時の「嫌なにおい」のことを聞いた。「あのひどい時代には帰りたくない」と言ったその一言、今は私に笑いかけてくれているその笑顔に人生のひだを感じた。

 私がその場にいたら、逃げようとする精神力があったか、水を求めようとする力がのこっていたか。道に倒れてすべてを捨てた気がする。いや、それでも現実に起こったとすれば、私も必死で生きようとするのだろうか。

 どちらにしろ、戦争は嫌いだ。そして二度と起こしてはならない。


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読んだ本

  • 上橋菜穂子: 虚空の旅人 (★★★★★)
  • 梁 石日: 雷鳴 (★★★)
  • 重松 清: リビング (★★★)
  • 三浦 綾子: 草のうた (★★★)
  • 山本 文緒: パイナップルの彼方 (★★★)
  • さだ まさし: 精霊流し (★★★★)
  • さだ まさし: 解夏 (★★★★★)
  • シーラという子: トリィ・L・ヘイデン (★★★★)
  • 重松 清: ビタミンF (★★★)
  • ジズー・コーダー: ライオンボーイⅡ 奇跡の翼 (★★★★)